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神経発達症(発達障害)
神経発達症(発達障害)の症状の現れ方は、一人ひとり違います。
気づきを治療・支援へつなぎ、可能性を拡げましょう。
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医療従事者からのメッセージ
神経発達症(発達障害)についての基礎情報
神経発達症※(発達障害)とは
- ※神経発達症は、DSM-5-TR精神疾患の診断・統計マニュアル1)で採用された用語で、知的発達症、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。 発達障害は、発達障害者支援法2)で「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。 このように、厳密には、神経発達症は発達障害より広い範囲を捉えていますが、本サイトではこれらを併記しています。
子ども・大人の神経発達症(ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD(学習障害)などの発達障害)の人は、行動パターンが多くの人と異なる場合がありますが、その理由は脳の働きに特性があるからで、本人の努力不足や親のしつけは原因ではありません。3,4)
脳の働きに特性があると、学校・仕事・日常生活に困りごとを抱えたり、人間関係に苦労したりすることがあります。
重要なことは、脳の働きに特性があっても、生活に支障がなければ神経発達症(発達障害)と診断されないということです。
大人になって、仕事を始めてから“生きにくさ”を感じて、その背景に神経発達症(発達障害)があったとわかる人も多いのです。5)
神経発達症(発達障害)の種類と特性
神経発達症(発達障害)には、いくつかの種類があります。現在、さまざまな名称が使われていますが、ここでは主に医学で使われる用語1)で説明します。ただし、医学用語の「限局性学習症」は、教育・福祉の分野でよく使われているLD(学習障害)を採用しています。
3) を参考に作成
●ASD(自閉スペクトラム症)4)
ASD(自閉スペクトラム症)の人は具体的なことは理解できるのですが、曖昧な表現になると理解が難しくなります。
他者の気持ちを察することや状況判断も苦手です。
また、活動がパターン化しやすく、いつも同じであることを好み、急な予定変更などに臨機応変に対応することが苦手です。
そして、特定の物事に興味が偏りやすく、強いこだわりをもちます。
加えて、聴覚・視覚・触覚・味覚・嗅覚のいずれかがふつうより敏感、または鈍感なことがあります。
●ADHD(注意欠如多動症)4)
ADHD(注意欠如多動症)の特性は、「不注意」と「多動性・衝動性」です。大人のADHD(注意欠如多動症)では、「多動性」が弱くなり、相対的に「不注意」と「衝動性」が目立つようになります。
●LD(学習障害)6)
知的な遅れはないのに勉強をがんばっても学習の効果が上がらず、得意・不得意に大きなばらつきがみられます。聞き取ることが難しい、話すこと、読むこと、推論、書くことや計算が苦手な場合があります。
●その他
神経発達症(発達障害)はASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD(学習障害)以外にも、知的発達症、児童期発症流暢症(吃音)、発達性協調運動症、チック症などがあります。1)
二次障害とは7)
神経発達症(発達障害)の特性を理解してもらえずに、家族や周囲の人から注意・非難・叱責を浴びると、自信をなくしていまい、別の問題が出てくることがあります。それが二次障害です。
二次障害として、心身症や意欲の低下、抑うつ的な気分、不登校の傾向・不登校、情緒不安定(すぐ怒る、興奮する)、人間関係でのトラブル頻発、(大人への)反抗的行動、反社会的な言動などがあげられます。
神経発達症(発達障害)の診断と支援ー診断がつかない例も含めてー
神経発達症(発達障害)であるかどうかを診断するうえでポイントになるのは、その人がもつ特性と生活において困難があるかどうかです。
特性による困難があるかどうかは場面や環境によって変わることがあります。また、診断基準を満たすかどうかは評価をする人によって異なることがあります。8)
加えて、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の両方の特性をもっていて、どちらか明確に診断することが難しい場合もあります。9)
神経発達症(発達障害)の相談・受診
相談・受診する前に
相談・受診の前に、これまでにどのような苦労があったのか、どのようなときに”生きにくさ”を感じたのか、まとめておきましょう。
相談する
受診すべきかどうか迷ったり、抵抗があったりする場合や、専門の医療機関を受診するまでに時間がかかってしまう場合、お住まいの地域の相談窓口に相談してみてはいかがでしょうか。
医療・福祉・教育分野で子ども・大人の神経発達症(ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD(学習障害)などの発達障害)の相談を受け付けています。
受診する
神経発達症(発達障害)の専門機関では長期間(数ヵ月)待った後に相談・受診となることもあります。10)
神経発達症(発達障害)が気になったら、相談・受診できるところへ早めにアクセスしてみましょう。
神経発達症(発達障害)の治療・支援
治療・支援の目標と全体像
子ども・大人の神経発達症(ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD(学習障害)などの発達障害)に対する治療・支援では、「ご本人が自尊心を低下することなく、充実した日常生活を送れること」を目標とします。
治療は、特性により現れる症状、二次障害による症状の一部を改善することが目的です。
早く気づいて治療・支援を受けることは大切ですが、大人になってわかったとしても、決して手遅れではありません。
就労機会の確保などの支援があり、よりよい生活を送るきっかけが得られます。神経発達症(発達障害)の人のライフステージに合った治療・支援が受けられるのです。
神経発達症(発達障害)の治療(指導)
●ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の治療4,11,12)
治療は大きく「心理社会的治療・環境調整」と「薬物療法」に分けられます。最初に心理社会的治療・環境調整・対応改善などを行います。それらだけでは不十分な場合、薬物療法を行うこともあります。
●LD(学習障害)の指導13,14)
LD(学習障害)では、苦手なものを検査やテストで評価したうえで、苦手さの特徴に合わせた指導をしていきます。
●併存症や二次障害の治療11,12,15,16)
神経発達症(発達障害)では、複数の神経発達症(発達障害)が併存することや、他の精神疾患が併存すること、さらに二次障害を生じることがあります。
治療・支援の際に利用できる医療・福祉制度
神経発達症(発達障害)の治療・支援の際に利用できる主な医療・福祉制度についてまとめています。困りごと・生きにくさを軽くして、自分に合った生活を送るために、制度を活用しましょう。
福祉機関を利用する
神経発達症(発達障害)の人やご家族・周囲の人は、保育所等訪問支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、就労支援などの福祉サービスを受けることができます。
家庭での支援・配慮
●保護者・ご家族を支える仕組み
神経発達症(発達障害)のお子さんの保護者や家族が互いに支え合う活動の一つにペアレントメンターや親の会(ピアサポーター)があります。また、ペアレント・トレーニングなど保護者がお子さんの育ちを支えるかかわり方を学ぶための支援が受けられます。17)
●お子さんとのかかわり方
お子さんとのかかわり方を考える上では、どんな特性があるのか理解することが重要です。18)
専門家と相談しながら環境を調整し、苦手なことは苦手なりに工夫して、得意なことはさらに伸ばしていくことで、お子さんに合った生活ができるようになります。19)
●本人に伝える
本人に診断を伝えるのは、本人が自分自身の特性について理解し、自信をもって生活していけるようになるためです。
自身の特性を理解することで、これまでにうまくいかなかったことを振り返り、これからどうしたらよいか考えるきっかけとなります。20)
学校での支援・配慮
神経発達症(発達障害)に合わせた支援・配慮が受けられます。特別支援学校、通級指導教室、特別支援教室など、それぞれに特徴があり、支援方法も異なります。大学等では、合理的配慮の体制整備が推進されています。
職場での支援・配慮
就労前の相談~就労後まで切れ目のない支援を受けることができます。
「何から始めればよいのかわからない」「自分に合った仕事や働き方を知りたい」「仕事内容や職場環境などについて必要な配慮を得たい」など、神経発達症(発達障害)の人が抱える困りごとやニーズに対して、ハローワークをはじめとした機関に相談にのってもらうことができます。
みんなの体験談
神経発達症(発達障害)と診断された方やご家族に、相談のきっかけ、周囲のサポート、気持ちの変化などについてお話を伺っています。
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【引用, 参考】
【引用】
1) 日本精神神経学会(日本語版用語監修), 髙橋三郎ほか監訳, 染矢俊幸ほか訳. DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル. 東京, 医学書院, 2023, pp.21-22.
2) 発達障害者支援法(平成十六年十二月十日法律第百六十七号)最終改正:平成二八年六月三日法律第六四号
【参考】
3) 政府広報オンライン. 発達障害って、なんだろう?
https://www.gov-online.go.jp/featured/201104/index.html [2024年7月10日アクセス]
4) 尾崎紀夫・三村 將(監修). 水野 雅文・村井 俊哉・明智 龍男(編集).標準精神医学 第9版.東京,医学書院,2024,pp.256-264.
5) 政府広報オンライン.大人になって気づく発達障害 ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を!
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202302/1.html [2024年7月10日アクセス]
6) 厚生労働省. 発達障害の理解~メンタルヘルスに配慮すべき人への支援~, 令和元(2019)年10月
7) 国立特別支援教育総合研究所. 発達障害と情緒障害の関連と教育的支援に関する研究―二次障害の予防的対応を考えるために― 平成22(2010)年度~23(2011)年度研究成果報告書. 平成24(2012)年3月, p.5, 16, 80, 84.
8) 鷲見聡. 発達障害の謎を解く. 東京, 日本評論社, 2015, pp.36, 137-138.
9) 本田秀夫. 発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち. 東京, SBクリエイティブ, 2018, pp.30-31, 38-39.
10) 汐田まどか, 平岩幹男. データで読み解く発達障害(平岩幹男総編集, 岡明ほか専門編集). 東京, 中山書店, 2016, pp.178-182, 224-225.
11) 海老島健, 石飛信 ほか. 児童・青年期精神疾患の薬物治療ガイドライン(中村和彦編). 東京, じほう, 2018, pp.50-78, 83.
12) ADHDの診断・治療指針に関する研究会、齊藤万比古・飯田順三編集. 注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン 第5版. 東京, じほう, 2022, pp.(24-25), (35-39), 276-283, 293-299, 360-370.
13) 平岩幹男, 松田幸都枝, 関あゆみ. データで読み解く発達障害(平岩幹男総編集、岡明ほか専門編集). 東京, 中山書店, 2016, pp.204-205, 208-209, 226-232.
14) 若宮英司. 特異的発達障害 診断・治療のための実践ガイドライン-わかりやすい診断手順と支援の実際- 特異的発達障害の臨床診断と治療指針作成に関する研究チーム編集(編集代表 稲垣真澄). 東京, 診断と治療社, 2010, p.133.
15) 樋端佑樹ほか. 精神医学. 2016, 58(7), 623-631.
16) 根來秀樹. 児童青年精神医学とその近接領域. 2019, 60(1), 98-101.
17) 厚生労働省. 障害者支援施策の概要.発達障害児者および家族等支援事業(都道府県、市町村)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hattatsu/gaiyo.html [2024年7月10日アクセス]
18) 田中康雄監修. イラスト図解 発達障害の子どもの心と行動がわかる本. 東京, 西東社, 2014, p.66.
19) 本田秀夫. あなたの隣の発達障害. 東京, 小学館, 2019, p.54.
20) 国立障害者リハビリテーションセンター・発達障害情報・支援センター. 本人に伝える.
http://www.rehab.go.jp/ddis/howto/diagnosis/affected/ [2024年7月10日アクセス]
監修(五十音順)
医療法人南風会万葉クリニック 子どものこころセンター絆 センター長 飯田 順三 先生
国立大学法人信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室 教授 本田 秀夫 先生
社会医療法人啓仁会堺咲花病院 副院長 村上 佳津美 先生
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