神経発達症(ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動性障害)、LD(学習障害)などの発達障害)の治療・支援の際に利用できる主な医療・福祉制度についてまとめています。

困りごと・生きにくさを軽くして、自分に合った生活を送るために、制度を活用しましょう。

医療費を助成する制度

自立支援医療(精神通院医療)1)

通常の医療費は原則3割負担ですが、自立支援医療制度を利用することによって、

原則1割負担となり、自己負担を抑えることができます。

世帯の所得や障害の程度によって月ごとの負担上限額が決まっています。

 

精神障害で通院による継続的な治療が必要な方が申請・利用することができ、神経発達症(発達障害)も対象に含まれます。

対象となる医療の範囲は、通院での診察、投薬、デイケア、訪問看護などで、入院は対象外です。

また、本制度で医療を受けられる施設は「指定自立支援医療機関」(病院・診療所、薬局、訪問介護ステーション)で、受給者証に記載されたものに限られています。

現在通院している医療機関や通院を希望する医療機関等が指定されているかどうかは、

医療機関またはお住いの自治体へご確認ください。

 

<支給申請>

お住いの自治体の担当窓口に書類を提出して申請します。

<申請に必要な書類>※1

・自立支援医療支給認定申請書:市区町村等から入手します

・医師の診断書※2:通院している病院等(指定自立支援医療機関に限る)で記載してもらいます

・同じ医療保険世帯の方の所得の状況等が確認できる資料:市区町村等から入手します

・健康保険証(写しなど)

・マイナンバーの確認書類

・その他自治体ごとに定める必要書類

  1. ※1
    必要な書類は自治体により異なる場合があるので、詳しくはお住いの自治体にご確認ください。
  2. ※2
    精神障害者保健福祉手帳と同時に申請する場合や、前年の申請で診断書を提出した場合など、診断書が省略できる場合があります。詳しくはお住いの自治体にご確認ください。

<有効期間>

自立支援医療受給者証の有効期間は1年以内です。

引き続き自立支援医療を受ける場合は、毎年更新の手続きが必要です。

高額療養費制度2)

医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月(月の初めから終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた額を支給する制度です。

上限額は年齢や所得によって異なります。

入院時の食費、差額ベッド代、先進医療にかかる費用等は対象外です。

  • おひとり1回分の窓口負担では上限額を超えない場合でも、 複数の受診や、同じ世帯にいる他の方(同じ医療保険に加入している方に限る)の受診について、 窓口でそれぞれお支払いいただいた自己負担額を1か月単位で合算することができます。
  • 過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がります。

<支給申請>

ご自身が加入している公的医療保険に、高額療養費の支給申請を提出または郵送することで支給が受けられます。

病院などの領収書の添付を求められる場合もあります。

  • 健康保険組合、協会けんぽの都道府県支部、市町村国保、後期高齢者医療制度、共済組合など、保険証の表面にてご確認ください。

神経発達症(発達障害)のある方に対する手当

<20歳未満>

特別児童扶養手当3)

20歳未満で、精神(神経発達症(発達障害)を含む)又は身体に障害を有する児童を家庭で監護、養育している父母等に支給されます。

  • 所得制限があります。

<支給申請>

お住いの自治体の窓口へ申請します。

詳しくはお住いの自治体にご確認ください。

障害児福祉手当4)

精神(神経発達症(発達障害)を含む)又は身体に重度の障害を有するため、

日常生活において常時の介護を必要とする状態にある在宅の20歳未満の者に支給されます。

詳しくはお住いの自治体にご確認ください。

  • 所得制限があります。

<支給申請>

お住いの自治体の窓口へ申請します。

詳しくはお住いの自治体にご確認ください。

<20歳以上>

障害年金5)

病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。

障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やけがで初めて医師の診療を受けたときに

国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。

なお、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。

また、障害年金を受け取るには、年金の納付状況などの条件が設けられています。

詳しくは日本年金機構ホームページ(外部リンク)をご参照ください。

<支給申請>6)

・障害基礎年金の場合:お住いの自治体の担当窓口に書類を提出して申請します。

(初診日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターが窓口となります)

・障害厚生年金:お近くの年金事務所または街角の年金相談センター窓口に書類を提出して申請します。

いずれの障害年金の場合も、ご本人の状況によって、障害の状態を確認するための補足資料として障害者手帳の提出が必要となる場合があります。

詳しくは日本年金機構ホームページ(外部リンク)をご参照ください。

特別障害者手当7)

20歳以上で、精神(神経発達症(発達障害)を含む)又は身体に著しく重度の障害を有するため、日常生活において常時特別の在宅の介護を必要とする状態にある方に支給されます。

詳しくはお住いの自治体にご確認ください。

  • 所得制限があります。

生活保護制度8,9)

生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、

健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。
障害のある方には、加算がある場合もあります。

傷病手当金10)

健康保険に加入して働いている人で、

業務外の病気やけがの療養のために休業した日から連続して3日後の後、4日目以降の仕事につけなかった日に対し支給されます。

直近の12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の平均の3分の2に相当する額が、休業した日単位で支給されます。

詳しくは、加入されている健康保険にご確認ください。

受けられる所得控除

医療費控除11)

所得税や住民税の算定において、ご自身またはご自身と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合に、支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができます。

詳しくは国税庁のページ(外部リンク)をご参照ください。

障害者控除12)

納税者自身、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。

なお、障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族を有する場合においても適用されます。

控除の対象に、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人が含まれます。

詳しくは国税庁のページ(外部リンク)をご参照ください。

障害者手帳について13-15)

障害者手帳には、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種類があります。

精神障害者保健福祉手帳13-15)

知的障害以外の神経発達症(発達障害)は、精神障害者保健福祉手帳の対象になります。

知的障害を伴う場合は、療育手帳も申請できます。

 

症状や生活における支障の程度に応じて、1級から3級の障害等級があります。

手帳を持つことで就労機会が増えたり、公共料金等の割引や税金の控除・減免などが受けられたりすることがあります。

手帳がなくとも、自立支援医療による医療費助成や、障害者総合支援法による障害福祉サービスを受けることができます。

 

障害等級の審査は各都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターにおいて行われます。

 

<支給申請>

お住いの自治体の窓口へ申請します。 詳しくはお住いの自治体にご確認ください。

<申請に必要な書類>

●申請書
:市区町村等から入手します

●診断書又は、精神障害による障害年金を受給している場合は、その証書等の写し
:診断書は、精神障害の初診日から6か月以上経ってから、精神保健指定医(又は精神障害の診断又は治療に従事する医師)に記載してもらいます

●本人の写真    

  • 精神科以外の科で診療を受けている場合は、それぞれの専門の医師が記載したもの

<有効期間>

手帳の有効期間は2年です。手帳を返すことや更新を行わないこともできます。

更新を希望する場合は再申請が必要になります。

療育手帳13,14)

知的障害があると判定された方に交付される手帳です。

知的障害がある場合は、療育手帳も申請できます。

本制度の運用方法は自治体によって異なるため、取得できる基準は自治体ごとで様々です。

地域によって「愛の手帳」など別の名称で呼ばれることがあります。

 

18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所、障害者福祉センターなどで判定します。

障害の程度によって等級の区分が分かれ、受けられるサービスの範囲が異なります。

  • 自治体によって判定機関の名称が異なることがあります。詳しくはお住いの自治体にご確認ください。

療育手帳を持っている方は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスや、

自治体・民間事業者が提供するサービスを受けることができます。

療育手帳がなくても利用できる支援もあります。

詳しくはこちらをご参照ください。

<支給申請>

お住いの自治体の窓口へ申請します。詳しくはお住いの自治体にご確認ください。

<期限>

手帳の有効期限はありませんが、「次の判定年月(日)」が記載されている場合、

その期限を過ぎると、それまで受けていた福祉サービスが受けられなくなることがあります。

そのため、次の判定年月日の記載がある場合は、その期限までに市町村窓口で再判定の申請が必要です。

手帳を返すこともできます。

  • 次回の判定年月の設定については自治体によって異なりますので、詳しくはお住いの自治体にご確認ください。
神経発達症(発達障害):治療・支援を支える障害者手帳

福祉サービス等の自己負担16)

【就学前~高校】

児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援といった障害福祉サービスの自己負担は、所得に応じて負担上限月額が設定され、

ひと月に利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じません。

 

また、3歳から5歳までの児童発達支援等の利用者負担は2019年10月から無償化されています。17)

※満3歳になって初めての4月1日から3年間

<無償化されているサービス>

・児童発達支援(医療型、居宅訪問型含む)

・保育所等訪問支援

・福祉型、医療型障害児入所施設

 

詳しくはお住いの自治体にご確認ください。

受けられるサービスの詳細は、こちらをご参照ください。

【大学等、学校卒業後・就労後】

就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援といった障害福祉サービスの自己負担は、

所得に応じて負担上限月額が設定され、

ひと月に利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じません。

詳しくはお住いの自治体にご確認ください。

 

受けられるサービスの詳細は、こちらをご参照ください。

関連ページへのリンク

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【参考】

【参考】
1) 厚生労働省. 自立支援医療(精神通院医療)について.

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000146932.pdf [2022年8月4日アクセス]

2) 厚生労働省保険局.  高額療養費制度を利用される皆さまへ.(平成30年8月診療分から)

https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf [2022年8月4日アクセス]

3) 厚生労働省. 特別児童扶養手当について.

https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/huyou.html [2022年8月4日アクセス]

4) 厚生労働省. 障害児福祉手当について.

http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/hukushi.html [2022年8月4日アクセス]

5) 日本年金機構. 障害年金.

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html [2022年8月4日アクセス]
6) 日本年金機構. 障害年金を請求する方の手続き.

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/shougai/seikyu/index.html [2022年8月4日アクセス]

7) 厚生労働省. 特別障害者手当について. 

http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/tokubetsu.html [2022年8月4日アクセス]

8) 厚生労働省. 生活保護制度.

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html [2022年8月4日アクセス]

9) 厚生労働省. 生活保護法による保護の基準.

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82051000&dataType=0 [2022年8月4日アクセス]

10) 厚生労働省保険局. 傷病手当金について. 令和2年3月26日.

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000619554.pdf [2022年8月4日アクセス]

11) 国税庁. 医療費を支払ったとき.

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_1.htm [2022年8月4日アクセス]

12) 国税庁. 障害者控除.

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1160.htm [2022年8月4日アクセス]

13) 厚生労働省. 障害者手帳.

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/techou.html [2022年8月4日アクセス]
14) 東京都福祉保健局. 発達障害者支援ハンドブック2020. 第4章 制度の概要と資料編. pp83,86,87.

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shougai/shougai_shisaku/hattatsushougai.files/200608-7.pdf [2022年8月4日アクセス]

15) 厚生労働省. 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス. 精神障害者保健福祉手帳.

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/certificate.html [2022年8月4日アクセス]

16) 厚生労働省. 障害福祉サービス等. 4 利用者負担.

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/index.html [2022年8月4日アクセス]

17) 厚生労働省. 2019年10月1日から3歳から5歳までの障害のある子どもたちのための児童発達支援等の利用者負担が無償化されます. 

https://www.mhlw.go.jp/content/12204500/000545321.pdf [2022年8月4日アクセス]


監修(五十音順)

医療法人南風会万葉クリニック 子どものこころセンター絆 センター長 飯田 順三 先生

国立大学法人信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室 教授 本田 秀夫 先生

社会医療法人啓仁会堺咲花病院 副院長 村上 佳津美 先生