ASD(自閉スペクトラム症)について

● 有病率は1〜2%。1) 日本の幼児の約3%、小学校高学年の約5%がASD(自閉スペクトラム症)と診断されているとの報告もある。2)
● 男女比は2〜4:1で、男性のほうが多い1)

● 1歳半くらいから、特徴が目立ち始めることが多い3)

ASD(自閉スペクトラム症)の「スペクトラム」とは?4,5)

スペクトラムは、「仲間とみなせる範囲」を意味します。
人によって表れ方はさまざまですが、共通する特性があるので、「スペクトラム」という言葉が使われています。

ASD(自閉スペクトラム症) 特性の概要

ASD(自閉スペクトラム症)の人は具体的なことは理解できるのですが、曖昧な表現になると理解が難しくなります。

他者の気持ちを察することや状況判断も苦手です。
また、活動がパターン化しやすく、いつも同じであることを好み、急な予定変更などに臨機応変に対応することが苦手です。
そして、特定の物事に興味が偏りやすく、強いこだわりをもちます。
加えて、聴覚・視覚・触覚・味覚・嗅覚のいずれかがふつうより敏感、または鈍感なことがあります。

睡眠障害を伴うことが多いという報告があります。6)
また、家などではごく普通に話せるのに、園や学校のような特定の状況では声を出して話すことができない場面緘黙(ばめんかんもく)が現れる場合もあります。7-9)

子どもの場合1,3,10)

特性:他の人と関心を共有するコミュニケーションが苦手

【指差し(通常、1歳半頃にはできる:早期発見のポイント) 】

● ほかの人が指を差しても、その指先の方向に視線を向けない

● ほかの人に教えるための指差しをしない  など
ASD:子どもの特性:他の人と関心を共有するコミュニケーションが苦手
  • 本田秀夫. 標準精神医学 第7版(尾崎紀夫ほか編). 東京, 医学書院, 2018, p.379. を参考に作成
  • 国立障害者リハビリテーションセンター・発達障害情報・支援センター. 発達障害に気づく 健診での気づき. http://www.rehab.go.jp/ddis/aware/baby/check/ [2023年9月26日アクセス]を参考に作成

特性:こだわりが強い、興味のある/なしがはっきりしている

● たとえ親でも、人への興味が薄い

● (友達、兄弟姉妹がいても)一人遊びが好き
● 特定の遊びを何度も繰り返して没頭する
● 興味のあるものへのこだわりが強い(ずっと遊んでいる)  など

特性:コミュニケーション(会話、表情、身振りなど)が困難

● 会話がかみ合わない

● 他者の表情に無関心
● うなずく、首を振るなどの身振りを用いない  など

特性:いつも同じ行動をとりたがる

● 生活などでの変化を嫌う:いつもの道が工事中でも、別の道に迂回することを嫌がる
● 急な予定変更などに臨機応変に対応することが難しい  など

特性:ずっと同じ動きをする(常同行動)

● くるくる回っている
● ソファの上で跳ねている  など

特性:聴覚・視覚・触覚・味覚・嗅覚のいずれかが敏感だったり、鈍感だったりする

● 特定の音が苦手

● 痛みに鈍感

● 特定の素材の衣服しか着たがらない

● 極端な偏食  など

大人の場合1)

特性:人とコミュニケーションをとるのが難しい

● 比喩表現や、たとえ話などをそのまま受け取ってしまう(「手を貸す(=手伝う)」という慣用句をそのまま受け取ってしまい指示に応えられないなど)
● 親密な付き合いが苦手で人と共感ができない  など
ASD:大人の特性:人とコミュニケーションをとるのが難しい
  • 厚生労働省:こころの耳 専門家向けお役立ちトピックス~メンタルヘルス不調関連~ No.1 職域で問題となる大人の自閉症スペクトラム障害 https://kokoro.mhlw.go.jp/mental-health-pro-topics/mh-pro-topics001/ [2023年9月26日アクセス]
  • 本田秀夫. 標準精神医学 第7版(尾崎紀夫ほか編). 東京, 医学書院, 2018, p.379. を参考に作成

特性:ほかの人の気持ち、先々の事柄を“想像する”ことが難しい

● 相手のことを考えずに一方的に話をしてしまう

● 仕事で融通が利かない:目の前の仕事はできるが、次の段取りや仕事、周りの状況まで想像できない  など

特性:こだわりが強く自分の世界に没頭する

● (興味のある世界で)一番にこだわる

● 興味のあることだと細かい知識まで覚える  など
※ほかにもさまざまな特性・困りごとがあります。
子どもと大人のASD 特性の概要

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【参考】

【参考】

1) 本田秀夫.  標準精神医学 第7版(尾崎紀夫ほか編). 東京, 医学書院, 2018, pp.379-380.

2) Sasayama D, et al. Psychiatry. 2021, 4(5), e219234.
3) 国立障害者リハビリテーションセンター・発達障害情報・支援センター.  発達障害に気づく 健診での気づき.

http://www.rehab.go.jp/ddis/aware/baby/check/ [2023年9月26日アクセス]

4) 神尾陽子.  データで読み解く発達障害(平岩幹男総編集、岡明ほか専門編集). 東京, 中山書店, 2016, pp.6-10.

5) 本田秀夫.  あなたの隣の発達障害. 東京, 小学館, 2019, p.29.
6) 中川栄二. 最新医学別冊 診断と治療のABC130 発達障害(神尾陽子企画). 大阪, 最新医学社, 2018, pp.132-133.

7) 角田圭子. 日本保健医療行動科学会年報. 2012, 27, pp.68-73. 

8) 久田信行ほか. 不安症研究. 2016, 8(1), 31-45.

9) Muris P, et al. Clinical Child and Family Psychology Review. 2021, 24, 294-325.

10) 神尾陽子. 最新医学別冊 診断と治療のABC130 発達障害(神尾陽子企画). 大阪, 最新医学社, 2018, p.88.


監修(五十音順)

医療法人南風会万葉クリニック 子どものこころセンター絆 センター長 飯田 順三 先生

国立大学法人信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室 教授 本田 秀夫 先生

社会医療法人啓仁会堺咲花病院 副院長 村上 佳津美 先生

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