インクルーシブ教育システムと特別支援教育1-3)

いま、学校現場では、人々が個性を尊重し支え合い、多様性を認め合える社会の実現に向けた取り組みが行われています。

障害の有無によらず、すべての子どもが同じ場で共に学び育つことができる、「インクルーシブ教育システム」が推進されており、このシステムを構築するために必要不可欠なのが特別支援教育です。

特別支援教育では、神経発達症などがある、または何らかの配慮が必要となる幼児・児童・生徒が、その能力や可能性を最大限に伸ばして自立や社会に参加できたり、また、生活や学習上の困難を改善・克服できるようにしたりするために、児童・生徒一人ひとりに応じた適切な指導や必要な支援を行い、教育の充実を図ります。

総合的な判断を経て、 子どもに合った教育が決定される1,2)

神経発達症に限らず、何らかの支援を必要とする子どもは、就学時健康診断の後に、総合的判断などを経て、特別支援学校、特別支援学級、通常学級のどこへ就学するのかを決定することになります。

また、通級指導教室に通級するかどうかも決定します。

【就学先の決定 手続きの流れ】

1-4-2-9_学校での支援・配慮_01_就学先の決定 手続きの流れ
文部科学省 初等中等教育局 特別支援教育課. 教育支援資料 参考資料. 2013

就学先の最終決定は教育委員会が行いますが、「本人・保護者の意見を最大限尊重(可能な限りその意向を尊重)する」ことが原則です。

各学校・学級の特徴および支援

各学校・学級にはそれぞれ特徴があり、支援方法も異なります1,4,5)

※自治体や学校によって、下記の名称・役割が異なることがあります。

1-4-2-9_学校での支援・配慮_02_各学校・学級の特徴および支援

「個別の教育支援計画」、「個別の指導計画」について1,6,7)

配慮が必要な児童・生徒に対して計画的な教育・支援を行うために、「個別の教育支援計画」、「個別の指導計画」がつくられます。

● 個別の教育支援計画:対象となる児童・生徒に関することについて、本人・保護者も含めた関係者で情報を共有するためのツールです。

乳幼児期から学校卒業まで、一貫した長期的な計画を学校が中心となり、医療、福祉等の関係機関とも連携して作成します。作成時には本人・保護者も加わります。

● 個別の指導計画:学習時に支援を必要とする児童・生徒に応じて各教科の目標や指導内容、配慮を示したもので、きめ細やかな指導をするためにつくられます。

個々に応じた支援:合理的配慮1)

学校では、神経発達症の児童・生徒に対するさまざまな支援・配慮がなされるよう法令で定められています。

その代表的なものが「合理的配慮」です。合理的配慮は本人の申し出に基づき、社会的障壁を解消するため、社会の側からさまざまな改善・変更・調整を行うことです。

イラストで解説します。

1-4-2-9_学校での支援・配慮_03_合理的配慮

「配慮がない状態」(左図)では、中央と右の子は壁の外を見られません。

「平等」な配慮(中央図)では、同じ高さの踏み台に乗ることで中央の子は見えるようになりましたが、右の子は見ることができません。

「公正」な配慮(右図)では、個々の身長に応じた踏み台を使うことで、全員が外を見ることができています。

「公正」な配慮のように、個々の状態・状況に応じた支援を「合理的配慮」と呼びます。

神経発達症であれば、それぞれの特性に応じた支援が当てはまります。

【神経発達症における支援の例】

 【神経発達症における支援の例】

学校には特別支援教育コーディネーターがいます1)

学校で、関係機関(医療機関や療育センターなどの福祉機関など)との連携調整や、保護者の連絡窓口など、連携の中心になるのが「特別支援教育コーディネーター」です。

神経発達症の特性・教育に関することで、誰に相談すればいいかわからない場合は、特別支援教育コーディネーターが誰か尋ねて、相談してみるのもよいでしょう。

高等教育機関における支援8,9)

大学や高等専門学校、専門学校等では、学びの機会を保障するため、合理的配慮(上記参照)の体制整備が推進されています。

入学試験時の配慮や入学後の生活支援・修学相談を受け付けている学校もあります。

神経発達症の相談は学生相談室や保健センター等で受け付けています。

合理的配慮の検討は、基本的に学生本人からの申し出で始まりますので、相談をしてみましょう。

就労についての相談や支援は、学内のキャリアセンター等に加えて、ハローワークや地域若者サポートステーションなども候補に挙がります。

詳しくは職場での支援・配慮をご覧ください。

関連ページへのリンク


1) 石橋裕子ほか編著. よくわかる!教職エクササイズ⑤ 特別支援教育(森田健宏ほか監修). 京都, ミネルヴァ書房, 2019, pp.6-11, 14-16, 18, 64-67, 85-86, 90-92, 134-142.

2) 文部科学省 初等中等教育局 特別支援教育課.教育支援資料 参考資料. 2013.

3) 文部科学省. 1. 共生社会の形成に向けて.
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1325884.htm [2021年5月24日アクセス]

4) 小林真理子. 子ども・大人の発達障害 診療ハンドブック “年代別にみる症例と発達障害データ集”(内山登紀夫編集、宇野洋太ほか編集協力). 東京, 中山書店, 2018, pp.206-207.

5) 文部科学省.学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の公布について(通知). 平成28(2016)年12月.

6) 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課. 初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド. 令和2(2020)年3月.

7) 文部科学省. 幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領等の改訂のポイント.
https://www.mext.go.jp/content/1421692_1.pdf [2021年5月25日アクセス]

8) 独立行政法人日本学生支援機構. 合理的配慮ハンドブック~障害のある学生を支援する教職員のために~. はじめに, pp.9-10, 17, 38, 49, 80.

9) 本田秀夫. あなたの隣の発達障害. 東京, 小学館, 2019, pp.184-186.


監修(五十音順)

医療法人南風会万葉クリニック 子どものこころセンター絆 センター長 飯田 順三 先生

国立大学法人信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室 教授 本田 秀夫 先生

社会医療法人啓仁会堺咲花病院 副院長 村上 佳津美 先生