タイトル こどもの特性を丸ごと受け入れ一緒に成長したい

※紹介した体験談は患者さんが経験された経過の一部を紹介したもので、すべての患者さんが同様の結果を示すものではありません

小見出し スクールソーシャルワーカーが橋渡しになってくれた

子どもが小学校3年生のとき、学級が荒れていたうえに担任の先生ともあまり良好な関係を築けず、完全な不登校にはならなかったものの五月雨式に保健室登校をするような状態になりました。幼いころから音や光などの刺激や人の気持ちに敏感なところがあり、騒がしい教室にはいられず担任の先生にも心を閉ざしてしまったんです。そのため、学校側からスクールソーシャルワーカー※1を紹介され、途中から適応指導教室※2に在籍することにしました。月1回のスクールソーシャルワーカーとの面談時、子どもの様子を伝えてくれるのと同時に私自身の悩みを聞いてくれたため、状況や感情を整理する助けになりました。このスクールソーシャルワーカーは町の保健師でもあったので、子どもがこのまま学校の教室に入れず適応指導教室に通い続けることへの不安を相談すると、現在の医療機関を紹介してくれました。

  1. ※1
    スクールソーシャルワーカーとは、問題を抱える児童・生徒を取り巻く環境へ働きかけたり、関係機関などとの連携・調整を行ったりする人を指します。
  2. ※2
    適応指導教室とは、不登校が長期化する児童・生徒に対し、学校生活への復帰を支援することを目的に、各都道府県や市区町村の教育委員会などによって学校以外の場所や余裕教室などに設置された施設のことです。
小見出し 診断を受けたことで子どもの行動が理解でき、気持ちが楽に

子どもは典型的なADHD(注意欠如・多動症)の特徴はなく、話すときに少し落ち着かない様子かな?というぐらいです。だからこそ学校で周囲になじめなかったり、勉強に対して全く意欲がわかなかったりする理由がわからず非常に悩んでいました。

医療機関に相談したところ、後日ウェクスラー児童用知能検査(WISC)などの発達検査を受けることになり、その結果、子どもの得手不得手が判明しADHD(注意欠如・多動症)との診断を受けました。また、日々の連絡事項を、板書が消される前に連絡帳に書き写すことができていなかったことなどもわかりました。こうしたことから、学校が苦手だったことなどこれまで悩んでいたことに対して納得ができ、気持ちがとても楽になりました。子ども自身も学校に行けないことや、授業についていけないことを引け目に感じていたようですので、診断を受けて、これは自分の気質だから心配しなくても良いんだ、大丈夫なんだと安心したように思います。治療にあたってくださる主治医の先生や心理士の先生とは非常に相性が良いようで、子どもがよく話をしてくれることからもそれがわかります。

小見出し 医療機関、学校、友だちのサポート、本人の成長が実を結んだ

保健室登校をするようになった当初は、担任の先生が保健室での様子を電話で伝えてくれたり、養護教諭やスクールソーシャルワーカー、適応指導教室の先生と連携して情報を共有してくれました。それらの情報は受診時に状況を伝えるうえで役立ち、適切な治療にもつながったと思います。現在は適応指導教室にも在籍する一方、クラス替えなども経て、学校の教室にも通えるようになりました。担任の先生が、教室に入りやすいよう本人が苦痛を感じない場所に席を用意してくれたり、グループ活動などで話しやすい友だちと一緒の班にしてくれたりと学校側でも継続してサポートをしてくれています。そのおかげで、他の子どもたちと一緒に教室で給食を食べたりして、学校に長い時間いられるようになりました。小学校6年生になり自分の気持ちを整理できるようになるなど、病院での治療の成果に加えて、本人の成長や努力も現在の良い状況につながったのではないかと思っています。

小見出し 子どものことを丸ごと受け入れて、焦らず一緒に成長していきたい

子どものできることが増えてくるともっといろいろなことをやらせてあげたいと思うのですが、「そこは焦らず、ゆっくり進みましょう」と、私自身も主治医の先生からアドバイスをいただいています。これまでは学校に行かせたい気持ちが強く、注意してしまうことが多かったのですが、現在は無理強いをせず本人の意思をしっかりと尊重するようになりました。子どもの勉強面については現在進行形で心配な部分はあるものの、子どもにあった勉強の仕方を考えていきたいと思います。診断を受けたことで、ADHD(注意欠如・多動症)をマイナスに考えてしまうのではなく、その子の特徴、個性なんだと改めて夫婦ともに気が付くことができました。これからも子どものことを丸ごと受け入れて、一緒に成長していきたいと思っています。

診察を受けている保護者と子どもの画像

関連ページへのリンク


監修

医療法人南風会万葉クリニック 子どものこころセンター絆 センター長 飯田 順三 先生