就職に向けた準備、就職活動、就労において、神経発達症(発達障害)の人が抱える困りごとやニーズに対して、相談先をまとめました。

サービスによっては、障害者手帳や障害福祉サービス受給者証が必要なものがあります。

詳しくは治療・支援の際に利用できる医療・福祉制度をご参照ください。

また、地域によって、下記の名称が異なることがあります。

大人の神経発達症(発達障害):就労前の相談~就労後までの切れ目のない支援

迷ったらハローワークに相談を1)

数多くの支援機関・サポートの中でも、ハローワークには、「障害学生等雇用サポーター」や「精神・発達障害者雇用サポーター」といった、神経発達症(発達障害)の人を支援するための担当者がいます。

その担当者から、上の表で示した各機関などに支援を依頼してもらえることもあります。

就労について分からないことがあれば、まずはハローワークへ相談してみるとよいでしょう。

● 新卒応援ハローワーク8)
大学、短大、専修学校などの新卒者および卒業後概ね3年以内の方を対象としています。

・自己分析を行ったうえで、担当のナビゲーターと希望職種、必要な支援などについて考えていきます。

・企業への応募書類の添削や模擬面接が受けられ、企業説明会も実施されています。

・就職活動中の悩みや不安などを臨床心理士にカウンセリングで相談できます。

・就職後も職場での悩みなど仕事に関する相談を受け付けています。

● わかものハローワーク9)
正社員での就職を目指す概ね35歳未満の方を専門に支援するわかものハローワークがあります。

・あなたの担当の就職支援ナビゲーターによって、支援プランに沿って職業紹介や履歴書の作成相談、面接指導が行われます。

・職業適性検査や自己分析、コミュニケ―ションスキルなど、就職に役立つセミナーが無料で受講できます。

就職活動への悩みや不安を解消するために、求職者同士のグループワークに参加することもできます。

・就職後の相談もできます。

    ハローワークインターネットサービスへリンクします(外部リンク)。

地域若者サポートステーション7)

「働きたいけど、どうしたらよいのか分からない、コミュニケーションが苦手」など、

働くことに悩みを抱えている15~49歳の方に対して、キャリアコンサルタントなどによる専門的な相談、

コミュニケーション訓練などによるステップアップ、協力企業への就労体験などにより、就労に向けた支援を行っています。

「身近に相談できる機関」として、全ての都道府県に設置されています。

神経発達症(発達障害)の人の中には、職場に神経発達症(発達障害)のことを伝えていないこともあるでしょう。

また、特性があることに気が付いているものの、診断を受けていない人もいるのではないでしょうか。

職場環境や業務内容が自分に合っていて、問題なく就労できている場合はよいですが、何かに困っていたり、

この先、配置換えや昇進などに伴って困難を感じたりした場合は、以下に示すところへ相談してみてはいかがでしょうか。

●  会社の産業医または産業保健師

●  勤め先に産業医がいない場合は、地域産業保健センター

●  医療機関(詳細は受診するをご参照ください)

●  発達障害者支援センター

●  市区町村 福祉関連の課

● ハローワーク

職場内で相談してみてもよいかもしれません。

例えば、得意なことを活かし、苦手なことをカバーできる業務への配置転換を求めたり、指示を一つずつしてもらえないかなどと上司に相談したりすることです。

「段取りよく仕事を進めることが苦手」「細かい調整を必要とする作業が苦手」など、診断がなくても特性を伝えることはできます。

職場環境の調整や配慮は神経発達症(発達障害)の人向けの特別なものではありません。

すべての人にとって働きやすい職場づくりにつながるものです。

 

支援を受けながら自分の特性を理解し、対応方法を工夫したり、周囲にも合理的配慮や環境調整を求めたりすることが自分に合った働き方につながります。

【職場での配慮の例】10,11)

●分かりやすいルール提示

●肯定的、具体的、視覚的な伝え方の工夫

(「〇〇をしましょう」といったシンプルな伝え方、興味関心に沿った内容や図・イラストなどを用いた説明など)

●スモールステップによる支援

(手順を示す、モデルを見せる、体験練習をする、新しく挑戦する部分は少しずつにするなど)

●感覚過敏がある場合は、音や肌触り、室温など感覚面の調整を行う

(イヤーマフを活用する、大声で説明せずホワイトボードで内容を伝える、人とぶつからないように居場所を衝立などで区切る、クーラーなどの設備のある部屋を利用できるように配慮するなど)

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホンの貸出しを受け付けています。

貸出しの対象となる事業主と事業主団体の詳細はこちら(外部リンク)をご参照ください。

大人の神経発達症(発達障害):職場での上司からの配慮例
    10) を参考に作成

【自分でできる対応方法の例】12)

●会議の時間を忘れてしまう

スケジュールアプリの利用

●仕事を先送りにする

タスクレベルでスケジュールアプリで管理

●すぐ物をなくす

一定距離離れると知らせるアプリの利用

●周囲の音が気になる場合

イヤホンなどの利用

 

ジョブコーチは職場での配慮を助けてくれる存在2,13)

現実問題として、職場にうまく適応できないこともあります。
そのような状況で頼りになるのが、ジョブコーチです。

神経発達症(発達障害)の人への支援に加え、就職した職場にも特性に配慮する方法などを支援してくれます。

ジョブコーチ支援は、職場(事業者)から地域障害者職業センターなどに依頼され、活動が始まりますので、職場と相談してみるとよいでしょう。

しかし、職場の状況によって、必ずしも希望が通らないことも考えられます。

周囲のペースについていくのが難しい場合や、働き続ければ心身の健康に影響が出そうな場合などには、障害者手帳や受給者証を取得して福祉サービスを受けることも視野に入れましょう。

例えば障害者雇用を選択すると、職場での配慮が受けやすくなったり、短時間勤務が可能になったりします。

詳しくは治療・支援の際に利用できる医療・福祉制度をご参照ください。

 

また、心身の不調を感じている場合は、受診後に必要に応じて休職し、復職する際に「リワークプログラム」と呼ばれるサービスを利用するのも一案です。

職場復帰に向けたウォーミングアップなどを目的とした支援をしています。

具体的には正しい生活リズムに整え、体力などを向上させ、ストレス対処や対人スキルについて学んでいきます。14)

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【参考】

【参考】

1) 厚生労働省. 発達障害者の就労支援.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06d.html [2024年7月3日アクセス]

2) 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構. 地域障害者職業センターのご案内.
https://www.jeed.go.jp/disability/person/om5ru800000003bn-att/q2k4vk000001rmrq.pdf [2024年7月3日アクセス]

3) 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構. 令和6年版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト. 2024, pp.258-261.
https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/guidebook/koshu_text.html [2024年7月3日アクセス]

4) 石橋裕子ほか編著. よくわかる!教職エクササイズ⑤ 特別支援教育(森田健宏ほか監修). 京都, ミネルヴァ書房, 2019, p.158.

5) 本田秀夫. あなたの隣の発達障害. 東京, 小学館, 2019, pp.184-190.

6) WAM NET(運営:独立行政法人福祉医療機構). 就労定着支援事業所.
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/fukushiworkguide/jobguideworkplace/jobguide_wkpl84.html [2024年7月3日アクセス]

7) 厚生労働省. 地域若者サポートステーション. 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/saposute.html [2024年7月3日アクセス]

8) 厚生労働省. 若者雇用促進総合サイト. 新卒応援ハローワークPR動画 新卒応援ハローワークへ行こう!.

https://wakamono-koyou-sokushin.mhlw.go.jp/search/service/tokusetu/movie/movie_shinsotu04.html#movie_contents [2024年7月3日アクセス]

9) 厚生労働省. わかものハローワーク.

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000181329.html [2024年7月3日アクセス]

10) 厚生労働省. 発達障害のある方への職場における配慮事例のご紹介.

https://www.mhlw.go.jp/content/000575751.pdf [2024年7月3日アクセス]

11)  厚生労働省. 障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン. 令和6(2024)年.

https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/tuuti1716-2.pdf [2024年8月5日アクセス]

12) 森晃爾ほか編. おとなの発達障がいマネジメントハンドブック. 東京, 労働調査会, 2021, pp.30, 67,95.

13) 厚生労働省. 職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について.

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06a.html [2024年7月3日アクセス]

14) 厚生労働省. 地域障害者職業センターの精神障害者職場復帰支援(リワーク支援)について.
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000022whe-att/2r98520000022wkf.pdf [2024年7月3日アクセス]


監修(五十音順)

医療法人南風会万葉クリニック 子どものこころセンター絆 センター長 飯田 順三 先生

国立大学法人信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室 教授 本田 秀夫 先生

社会医療法人啓仁会堺咲花病院 副院長 村上 佳津美 先生