治療・支援の目標

神経発達症(発達障害)に対する治療・支援では、「ご本人が自尊心を低下することなく、充実した日常生活を送れること」を目標とします。
治療や支援を受けることで、自分の特性を理解するきっかけをつかめます。
そして、苦手なことは苦手なりに工夫して改善し、得意なことはさらに伸ばしていくことで、以前に比べ、自分に合った生活を送ることができるようになります。

治療・支援の全体像1-4)

治療は、神経発達症(発達障害)の特性により現れる症状の一部や二次障害による症状を改善することが目的です。
支援は、神経発達症(発達障害)の人が置かれた環境から生じる困りごと・生きにくさを軽くして、生活の質(QOL)を上げることを目指します。

もちろん、治療と支援は関係しあっていますので、関係各所は相互に連携して神経発達症(発達障害)の人をサポートします。

治療・支援にかかる自己負担を軽減する制度があります。詳しくはこちらをご参照ください。

【治療・支援の概念図】

子どもと大人の神経発達症(発達障害)の治療・支援の概念図
  • 汐田まどか. データで読み解く発達障害(平岩幹男総編集、岡明ほか専門編集). 東京, 中山書店, 2016, pp.178-182.
  • 厚生労働省. 就労準備支援事業従事者養成研修 発達障害の理解, 2019年10月
  • 長瀬美香. 小児科診療. 2017, 80(3), 381-389.
  • 厚生労働省. 厚生労働省における発達障害者支援施策, p.1, 6, 7, 12を参考に作成
神経発達症(発達障害)の人への総合的な支援を行うことを目的とした専門機関として、発達障害者支援センターがあります。

発達障害者支援センターの役割

相談支援 神経発達症(発達障害)の人とその家族・周囲の人の相談に乗ります
医療・福祉・教育といった支援機関の紹介も行います
発達支援 療育方法についてアドバイスします
また、検査をして、その特性に応じたアドバイスを送ることもあります
就労支援 労働関係機関と連携して情報提供などを行います
普及啓発・研修 神経発達症(発達障害)を多くの人に知ってもらうための活動を行います
同センターと支援機関が連携して、地域に応じた支援を行っており2,4)、神経発達症(発達障害)の人も、またその人を支えるご家族や周囲の人も、各機関から支援を受けることができます。

【支援(関係機関)の概念図】

子どもと大人の神経発達症(発達障害)の支援(関係機関)の概念図
厚生労働省.  就労準備支援事業従事者養成研修 発達障害の理解, 2019年10月を参考に作成

治療・支援は年齢に関係なく、 ライフステージに合わせて受けられます3,5-7)

早く気づいて治療・支援を受けることは大切ですが、大人になってわかったとしても、決して手遅れではありません。

就労機会の確保などの支援があり、よりよい生活を送るきっかけが得られます。
つまり、神経発達症(発達障害)の人のライフステージに合った治療・支援が受けられるのです。

【子どもと大人の神経発達症(発達障害)の気づきと治療・支援】

子どもと大人の神経発達症の気づきと治療・支援
  • 1) Hyman SL, et al. Pediatrics. 2020, 145(1), e20193447.
  • 2) 長瀬美香. 小児科診療. 2017, 80(3), 381-389.
  • 3) 吉川徹, 内山登紀夫. 子ども・大人の発達障害 診療ハンドブック “年代別にみる症例と発達障害データ集”(内山登紀夫編集、宇野洋太ほか編集協力). 東京, 中山書店, 2018, pp.72-89, 206-211. を参考に作成

【ライフステージ合わせた支援を継続していくために】8,9)

ライフステージに応じた切れ目のない適切な支援を継続するためには、お子さんの発達に関する情報が、保護者や保健、福祉、医療、教育等の関係機関に共有されることが必要です。

そのために、情報を集約するツールとして、サポートファイルが活用されています。

自治体によって名称が異なり、相談支援ファイルやサポートブックなどと呼ばれることもあり、

書式や運用方法についても自治体ごとで様々です。

担任の先生へお子さんの特性についての理解をしてもらったり、

進級や進学時の情報の引継ぎに利用したり、関係機関との連携のためにも役立てることができます。

【子どもから大人への移行期の治療・支援】10,11)

子どもから大人への移行期に、医療においては児童精神科・小児精神科・小児神経科などの子どもの診療科から、精神科などの大人の診療科に移行します。

小児ケアモデルから成人ケアモデルに切り替えていく過程の医療とそれに関連する支援を移行期医療(トランジション)といい、お子さんが大人になり自身で適切な医療を活用できることを目指します。

 

その際、お子さん自身が自分の特性を自分なりに理解し、困りごとやそれに対する治療・支援について対応していく力(ヘルスリテラシー)が必要です。

具体的には、自分の特性を知っていること、なぜ治療・支援を受ける必要があるか理解していること、周りへの伝え方を含めて将来どのように神経発達症(発達障害)と向き合っていくかを、お子さん自身が考えることが重要です。

 

幼少期からお子さん自身の 「できる」 ことを増やし、自立を支援することが大切です。

そのために、お子さんの自立にむけた家族の関係性や役割機能を変化させてゆくことも必要となります。

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【参考】


【参考】
1) 汐田まどか.  データで読み解く発達障害(平岩幹男総編集, 岡明ほか専門編集). 東京, 中山書店, 2016, pp.178-182.

2) 厚生労働省.  就労準備支援事業従事者養成研修 発達障害の理解, 2019年10月

3) 長瀬美香.  小児科診療. 2017, 80(3), 381-389.

4) 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター.  発達障害者支援センターとは、発達障害者支援センターの事業内容

http://www.rehab.go.jp/ddis/action/about/、http://www.rehab.go.jp/ddis/action/work/ [2023年9月26日アクセス]

5) Hyman SL, et al. Pediatrics. 2020, 145(1), e20193447.

6) 吉川徹, 内山登紀夫.  子ども・大人の発達障害 診療ハンドブック “年代別にみる症例と発達障害データ集”(内山登紀夫編集, 宇野洋太ほか編集協力). 東京, 中山書店, 2018, pp.72-89.

7) 厚生労働省.  厚生労働省における発達障害者支援施策, p.1. 

https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/seminar/dl/04-02.pdf [2023年9月26日アクセス]
8) 平生尚之ほか. LD 研究. 2021, 30(4), 362-373.
9) 文部科学省. 特別支援教育について. 早期からの教育相談・支援体制構築事業. 

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main/006/h24/1327799.htm [2023年9月26日アクセス]

10) 国立成育医療研究センター. 国立成育医療研究センターの成人移行支援に対する考え方.

https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/information/transition.html [2023年9月26日アクセス]

11) 田中恭子. 児童青年精神医学とその近接領域. 2018, 59(5), 551-561.


監修(五十音順)

医療法人南風会万葉クリニック 子どものこころセンター絆 センター長 飯田 順三 先生

国立大学法人信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室 教授 本田 秀夫 先生

社会医療法人啓仁会堺咲花病院 副院長 村上 佳津美 先生

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