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神経発達症(発達障害)の治療(指導)
神経発達症(発達障害)では、特性により現れる症状、二次障害による症状に応じた治療が行われます。
ここではASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の基本的な治療、LD(学習障害)の基本的な指導の流れと、神経発達症(発達障害)の併存や二次障害の症状があったときの治療について紹介します。
ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の治療1-3)
治療は大きく「心理社会的治療・環境調整」と「薬物療法」に分けられます。
最初に心理社会的治療・環境調整・対応改善などを行います。
それらだけでは不十分な場合、薬物療法を行うこともあります。
【代表的な心理社会的治療と環境調整の概要・具体例】
● ソーシャルスキルトレーニング(SST:社会生活訓練)
・対象:本人
・概要:自らの特性を知り社会生活に適応するためのスキルを学ぶ2,4)
・具体例:複数の人で集まって生活や仕事など、よくある場面のロールプレイをする4)
● ペアレント・トレーニング(PT)2,3)
・対象:神経発達症(発達障害)の子どもの親
・概要:子どもの特性を知り、接し方を学ぶ
・具体例:好ましい行動→ほめる、好ましくない行動→無視、危険な行動→叱るなど
詳しくはこちらをご参照ください。
※そのほかにも、それぞれの神経発達症(発達障害)に特化した方法〔ABA(応用行動分析学)、TEACCH(Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Children)など〕6)があります。
【ASD(自閉スペクトラム症) 薬物療法のポイント1)】
- ASD(自閉スペクトラム症)の特性(コミュニケーションがうまくできない、強いこだわり)そのものは 薬剤で改善させることが難しい
- 同症でみられる易刺激性〔癇癪(かんしゃく)、攻撃性、興奮など〕には、 一部の抗精神病薬が効果的な場合がある
【ADHD(注意欠如多動症)薬物療法のポイント1,2)】
- ADHD(注意欠如多動症)の治療薬は、ADHDの症状(不注意・多動性・衝動性)を改善する
- 安定した状態が長く続けば、服用を終わらせることもできる
LD(学習障害)の指導6,7)
LD(学習障害)では、苦手なものを検査やテストで評価したうえで、苦手さの特徴に合わせた指導をしていきます。以下に具体例を示します。
【読み書き障害の指導例】
- ※関あゆみ. データで読み解く発達障害(平岩幹男総編集, 岡明ほか専門編集). 東京, 中山書店, 2016, pp.226-232.
【算数障害の指導例】
- ※若宮英司. 特異的発達障害 診断・治療のための実践ガイドライン-わかりやすい診断手順と支援の実際- 特異的発達障害の臨床診断と治療指針作成に関する研究チーム編集(編集代表 稲垣真澄). 東京, 診断と治療社, 2010, p.133.
併存症や二次障害の治療1,2,8,9)
神経発達症(発達障害)では、複数の神経発達症(発達障害)が併存することや、他の精神疾患が併存すること、さらに二次障害を生じることがあります。
その場合の治療も、「心理社会的治療・環境調整」と「薬物療法」に分けられます。
最初に心理社会的治療・環境調整・対応改善などを行います。
また、薬物療法を行うこともあります。
統合失調症や双極性障害が併存する場合などは、薬物療法を優先することがあります。
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【参考】
【参考】
1) 海老島健, 石飛信 ほか. 児童・青年期精神疾患の薬物治療ガイドライン(中村和彦編). 東京, じほう, 2018, pp.50-78, 83.
2) ADHDの診断・治療指針に関する研究会、齊藤万比古編集. 注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン 第4版. 東京, じほう, 2016, pp.(22-23), (27-32), 230-233, 266-271, 275-279.
3) 本田秀夫. 標準精神医学 第7版(尾崎紀夫ほか編). 東京, 医学書院, 2018, p.382.
4) 平岩幹男. データで読み解く発達障害(平岩幹男総編集, 岡明ほか専門編集). 東京, 中山書店, 2016, pp.198-199.
5) 日本発達障害ネットワーク JDDnet作成, 日本ペアレント・トレーニング研究会協力. ペアレント・トレーニング実践ガイドブック(令和元年度障害者総合福祉推進事業). 2020, pp.12-13.
6) 平岩幹男, 松田幸都枝, 関あゆみ. データで読み解く発達障害(平岩幹男総編集, 岡明ほか専門編集). 東京, 中山書店, 2016, pp.204-205, 208-209, 226-232.
7) 若宮英司. 特異的発達障害 診断・治療のための実践ガイドライン-わかりやすい診断手順と支援の実際- 特異的発達障害の臨床診断と治療指針作成に関する研究チーム編集(編集代表 稲垣真澄). 東京, 診断と治療社, 2010, p.133.
8) 樋端佑樹ほか. 精神医学. 2016, 58(7), 623-631.
9) 根來秀樹. 児童青年精神医学とその近接領域. 2019, 60(1), 98-101.
監修(五十音順)
医療法人南風会万葉クリニック 子どものこころセンター絆 センター長 飯田 順三 先生
国立大学法人信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室 教授 本田 秀夫 先生
社会医療法人啓仁会堺咲花病院 副院長 村上 佳津美 先生
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