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ご自身やご家族の症状について、心配や疑問を持たれた場合には、ご自分で判断されずにお医者さんにご相談ください。
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスに感染して起こる感染症です。インフルエンザウイルスは、A型、B型、C型、D型の4種類に分けられます。主にヒトに流行を起こすのは、A型とB型のウイルスです。A型はヒト以外にも、ブタ、ウマなどの哺乳類やカモ、ニワトリなどの鳥類に感染します。一方、B型とC型は主にヒトへのみ、D型は家畜へのみ感染します。A型インフルエンザウイルスの大きさは80~120nm(1nmは1mmの100万分の1)で、ウイルス表面からタンパク質がスパイクのように突き出ています。
A型インフルエンザウイルスは、ウイルス表面から突き出たタンパク質のうち、重要なタンパク質であるヘマグルチニン(H1~H16の16種類)と、ノイラミニダーゼ(N1~N9の9種類)の組み合わせによって、144通りの亜型に分類されます。これらの亜型はすべて、カモなどの水禽(すいきん)から見つかっています。さらに、ヘマグルチニンH17、H18やノイラミニダーゼN10、N11がコウモリから見つかっています。例えば、ヘマグルチニンがH1で、ノイラミニダーゼがN1であれば、A(H1N1)亜型というように呼ばれます。亜型ごとに感染後に体内の免疫反応を引き起こす抗原としての性質(抗原性)が異なるため、以前に同じ亜型のインフルエンザにかかったことがあっても、その年に流行している亜型に合致する免疫を持っていないとインフルエンザにかかります。
A型・B型インフルエンザの流行には季節性があり、国内では例年12月~3月に流行し、短期間で多くの人に感染が拡がります。例年の季節性インフルエンザの感染者数は国内で推定約1,000万人とされます。
インフルエンザでは、咳やのどの痛みなどの呼吸器の症状だけでなく、高熱、全身のだるさ(倦怠感)、食欲不振などの全身症状が強く、しばしば、頭痛や関節痛・筋肉痛など呼吸器以外の症状を伴います。
合併症として、気管支炎、肺炎、中耳炎などがみられます。重大な合併症には急性脳症(インフルエンザ脳症)や重症肺炎があります。
もし、インフルエンザが疑われる症状に気づいたら、できるだけ早く医療機関で診察を受けましょう。
インフルエンザとかぜ(普通感冒)はどう違うのでしょう。一般的に、かぜはさまざまなウイルスなどによって起こる病気です。その症状はのどの痛み、鼻汁、くしゃみ、咳などが中心で、強い全身症状はあまりみられません。発熱もインフルエンザほど高熱とならず、重症化することはあまりありません。
一方、インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染することで起こる病気です。症状として、普通のかぜのようなのどの痛み、鼻汁、咳などの症状もみられますが、38℃以上の高熱、頭痛、関節痛・筋肉痛、全身のだるさ(倦怠感)などが比較的急速に同時に現れる特徴があります。また、小児ではまれに急性脳症を、高齢者や免疫力の低下している人では肺炎を伴うなど、重症になることがあります。
インフルエンザ | かぜ | |
発病 | 急激 | ゆるやか |
発熱 | 通常38℃以上の高熱 | ないか、あっても37℃台 |
強い全身症状※1 | ある | ないか、あってもまれ |
上気道炎症状※2 | 全身症状に続いて出現 | 最初からみられる |
咳 | 強いことが多い | 軽い |
次のような方は、インフルエンザにかかると重症化しやすいといわれるハイリスクグループにあてはまります。
A型インフルエンザはその原因となるA型インフルエンザウイルスの抗原性が小さく変化しながら、毎年世界中のヒトの間で流行しています。これが季節性インフルエンザです。
一方、新型インフルエンザは、時としてその抗原性が大きく異なるインフルエンザウイルスが現れ、多くのヒトが免疫を持たないために急速に感染が拡がります。国内で新型インフルエンザが流行すれば、国民の生命、健康、医療体制、生活、経済に大きな影響を与えかねません。
20世紀に世界的な大流行(パンデミック)を起こした新型インフルエンザは、大正7~8(1918~1919)年のスペインインフルエンザ[原因ウイルスはA(H1N1)亜型]、昭和32~33(1957~1958)年のアジアインフルエンザ[原因ウイルスはA(H2N2)亜型]、昭和43~44(1968~1969)年の香港インフルエンザ[原因ウイルスはA(H3N2)亜型]の3つです。このうちスペインインフルエンザによる死亡者数は全世界で2,000~4,000万人と言われ、日本でも約40万人の犠牲者が出たと推定されています。
今世紀に入ってからは、平成21~22(2009~2010)年に新型インフルエンザ[原因ウイルスはA(H1N1)pdm2009亜型、「pdm」はパンデミック]が発生しました。
これらのインフルエンザは、パンデミックの結果、多くの国民が免疫を持つようになり、現在では季節性インフルエンザとして流行し、特別に取り扱われることはありません。
インフルエンザの流行は主に冬季に、地域や学校などで起こります。ワクチンを予防接種すると、インフルエンザウイルスに対抗するための抗体が産生されます。
その年に流行するインフルエンザは毎年予測され、予防接種のためのワクチンが作られます。予防接種でインフルエンザウイルスの感染を完全に予防することはできませんが、インフルエンザにかかる人や、重症化して入院する人を減らせます。
なお、現在日本で使われているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンといって、インフルエンザウイルスの感染力を失わせて人が免疫を作るのに必要な成分だけを取り出して作ったものです。インフルエンザワクチンには感染力がないので、予防接種によってインフルエンザを発症することはありません。
インフルエンザワクチンは、13歳未満では2回接種します。13歳以上では原則1回接種ですが、患者さんの状況等によって医師の判断により2回接種が勧められる場合があります。
日常生活の中でインフルエンザを予防することも大切です。
インフルエンザの感染を予防するための「咳エチケット」とは、咳やくしゃみに含まれているかもしれない病原体(感染の原因物質)が、周囲に飛び散らないように気をつけることです。
インフルエンザの検査法として、現在、医療機関では「迅速抗原検出キット」を使う検査が行われていま す。鼻やのどの粘液を綿棒でぬぐった液や、鼻水(鼻かみ液)をキットを用いて検査すると、感染があるかどうかや感染しているウイルスの型が短時間でわかります。5分以内に結果がわかるキットもあります。
ただし、症状が出る前のウイルス量が少ない時期に検査した場合や、検査する材料の採取がうまくいかなかった場合は、感染していても陽性にならないことがあります。
現在日本で一般的に使われている抗インフルエンザウイルス薬には、飲み薬(2種類)、吸入薬(2種類)、点滴注射薬(1種類)があり、それぞれ用法・用量、期間(何日間の服用が必要か)が異なります。症状が出始めてからの時間や、病状によって、医師は一人ひとりの患者さんを診て抗インフルエンザウイルス薬を使用するかどうかを判断しますので、必ず医師の指示に従ってください。
同居している家族がインフルエンザにかかったときは、家庭内での感染を防ぐことが非常に重要です。以下のことに注意して看護してください。
インフルエンザの治療を受けた後でも次のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。また、それ以外でも、いつもと様子が違って心配な場合は医療機関に相談してください。
医療機関を受診する前には電話で連絡し、受診時間や入り口等を確認してください。受診するときはマスクを着用し、咳エチケットを心がけるとともに、公共交通機関の利用はできるだけ避けましょう。
インフルエンザの症状に加えて意識障害(呼びかけに答えないなど)、意味不明の言動、持続性のけいれんといった症状が現れますので、このような症状がみられたら、速やかに医療機関を受診してください。またいくつかの強い解熱剤によりインフルエンザ脳症がより重症化することがあるため、解熱剤の使用については医師に相談してください。
小児のインフルエンザでは、インフルエンザ脳症とは別に、異常行動が約10%にみられます。ほとんどが発熱1~2日目にあらわれ、1~2日間で軽快します。
極めてまれなことですが、異常行動の結果、転落等による死亡事故が起こる場合があります(2009年4月から2019年8月末までに13件の報告)。
異常行動は抗インフルエンザ薬が使用されていなくても報告されていますので、小児・未成年者がインフルエンザと診断され、治療を開始してから少なくとも2日間は、異常行動による事故を防ぐために、自宅で小児・未成年者が一人にならないように注意してください。
異常行動による転落などの事故を防ぐために、次のような対策を取ってください。
学校保健安全法施行規則第19条において、インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)に罹患した場合、学校や園への出席停止の期間の目安は「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」となっています。
ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りではありません。出席停止の期間は、各学校・園によってそれぞれに定められている場合もありますので、詳しくは、各学校・園にお問い合わせください。
学校保健安全法施行規則より
成人には、インフルエンザと診断されてからの出勤再開に関して特に決まりはありません。しかし、一般的にインフルエンザ発症後7日目でも鼻やのどからウイルスを排出している可能性があるため、たとえ発熱等の症状がなくなっていても他の人にうつすことはあるので外出には注意が必要です。
基本的に、発熱がなくなってから2日目までが外出自粛の目安です。しかし、完全に他の人にうつさなくなる時期は明らかでないため、業務上可能であれば、発症した日の翌日から7日を経過するまで外出を自粛することが望ましいと考えられます。
インフルエンザをしっかり予防して、かからないように気をつけましょう。
ただし、きちんと予防をしていてもインフルエンザにかかってしまうことがあります。
早期治療が大切ですから、インフルエンザが疑われるときはできるだけ早く医療機関で診察を受けましょう。