受診のハードルが高くても、 相談から始められる

「神経発達症(発達障害)かも?」と思っても、医療機関を受診しようとすると心理的なハードルは高いものです。

受診すべきかどうか迷ったり、抵抗があったりする場合や、専門の医療機関を受診するまでに時間がかかってしまう場合、お住まいの地域の相談窓口に相談してみてはいかがでしょうか。

実はたくさんある相談場所1-3)

神経発達症(発達障害)の相談を受け付けている場所は、医療・福祉・教育分野と多岐にわたっています。

【神経発達症(発達障害) 主な相談先】

子どもと大人の神経発達症(発達障害)の主な相談先
  • 石橋裕子ほか編著. よくわかる!教職エクササイズ⑤ 特別支援教育(森田健宏ほか監修). 京都, ミネルヴァ書房, 2019, p.64.
  • 厚生労働省. 就労準備支援事業従事者養成研修 発達障害の理解. 2019年10月
  • 厚生労働省 発達障害者雇用促進マニュアル作成委員会編著. 発達障害のある人の雇用管理マニュアル. 東京, 一般社団法人 雇用問題研究会, 2006, p.76. http://www.koyoerc.or.jp/investigation_research/245.html [2023年6月14日アクセス]

<子ども・大人共通の相談先>

  • 各機関・施設の名称は地域によって異なります。

● 発達障害者支援センター2)
各都道府県・政令指定都市にあり、神経発達症(発達障害)に詳しいスタッフが在籍しています。

医療・福祉・教育といった支援機関の紹介も行います。

  • 国立障害者リハビリテーションセンターホームページへリンクします(外部リンク)。
● 精神保健福祉センター2,3)
各都道府県・政令指定都市にあります。
こころの病気(精神疾患)が中心ですが、神経発達症(発達障害)の相談を受け付けている場合もあります。

● 保健所2,3)
地域の保健対策を担う機関です。各都道府県に数か所以上設置されています。

保健所では、精神保健福祉に関する活動を長年行ってきており、神経発達症(発達障害)の相談も受け付けています。

● 市区町村 福祉関連の課(地域の発達相談窓口)
市区町村の福祉関連の課では、子育てや介護など、自治体の福祉に関する幅広い活動を行っています。

困りごとに応じたさまざまな情報や地域での支援体制を教えてくれます。

● 医療機関(受診に関する相談)
受診する前にソーシャルワーカーが受診に関する相談を行う場合があります。

受診に関しては、受診するをご参照ください。

● その他:支援団体4)
神経発達症(発達障害)の人、そのご家族などを会員とする当事者団体も大きな役割を果たしており、患者会やNPO法人の中には、神経発達症(発達障害)の相談を受け付けているところがあります。

また、セミナー開催や神経発達症(発達障害)の子どもを育てた経験のある保護者がその経験を活かし、同じ親の立場から相談に乗ったり、情報を提供してくれたりする活動(ペアレントメンター)などを積極的に行っている団体もあります。

<ライフステージ別の相談先>

就学前

  • 各機関・施設の名称は地域によって異なります。
● 市区町村 福祉関連に加え、母子保健や子育て関連の課5)
子育てに関する不安などについて相談を受け付けていることがあります。

● 幼稚園・保育所・こども園1,2)
子どもが通っている施設の先生に尋ねてみるのもよいでしょう。

担任の先生に加えて、神経発達症(発達障害)に詳しい巡回支援専門員や子育て支援の相談員に相談したいと伝える6)のもひとつの方法でしょう。

● 児童相談所2,7)
18歳未満の人のさまざまな相談を受け付けており、その中に神経発達症(発達障害)も含まれます。

● 親子のための相談LINE8)
子育てや親子関係についての相談に、子ども(18歳未満)と保護者の方などが利用できます。匿名でも相談ができます。

  • 厚生労働省ホームページへリンクします(外部リンク)。

小学校~高校

  • 各機関・施設の名称は地域によって異なります。
● 市区町村 福祉関連に加え、母子保健や子育て関連の課5)
子育てに関する不安などについて相談を受け付けていることがあります。

● 小・中学校、高校1,2)
子どもが通っている学校の先生に尋ねてみるのもよいでしょう。

担任の先生に加えて、特別支援教育コーディネーターという役職があり、相談窓口になってくれます。

学校内の関係者や教育、医療、保健、福祉などの関係機関との連絡調整や、

個別の教育支援計画・個別の指導計画(詳しくはこちら)の作成などを担っています。

加えて、スクールカウンセラー、養護教諭なども相談先にあげられます。

 

学校では、神経発達症(発達障害)の児童・生徒に対するさまざまな支援・配慮がなされるよう法令で定められています。特性によって、多くの人が適応している環境や学び方で困りごとを感じる場合、学びの障壁となっている環境や方法の改善・変更・調整(合理的配慮)を求めることができます。9)

 

これまで支援を受けてこられた方は、どんな支援を受けてきたか、これからどんな支援を必要としているかを伝えたうえで、

これから受けられる支援について、入学試験前や入学後に相談してみましょう。

一方で、進学に伴う環境や学び方の変化で、困りごとを感じるようになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

学校での合理的配慮は本人からの申し出によって始まります。詳しくはこちらをご参照ください。

● 教育委員会、教育センター1,10)
両機関とも、子どもの教育に関する相談を受け付けています。

神経発達症(発達障害)のほか、いじめや不登校などの相談にも応じています。

  • 国立特別支援教育総合研究所ホームページへリンクします(外部リンク)。

● 児童相談所2,7)
18歳未満の人のさまざまな相談を受け付けており、その中に神経発達症(発達障害)も含まれます。

● 親子のための相談LINE8)
子育てや親子関係についての相談に、子ども(18歳未満)と保護者の方などが利用できます。匿名でも相談ができます。

  • 厚生労働省ホームページへリンクします(外部リンク)。

大学等(高等教育機関)11,12)

● 学生相談室、保健センター、障害学生支援室
修学で困っていることを話してみましょう。授業などでどのような配慮があると学びやすくなるか、考えていきます。

合理的配慮は本人からの申し出によって始まります。

  • 名称は大学等によって異なります。

● キャリアセンター、就職支援課
就職に関する悩みも出てくると思います。

ポイントは、発達の特性に応じた職業や就労環境を選ぶことです。

 

ただ、日々の学習と就職活動を同時に進めることを難しく感じる場合もあるかもしれません。

そんなときにも、相談先を活用しましょう。

さらに、卒業後でも、福祉サービスを利用して就労に向けた準備を始めることもできます。

  • 名称は大学等によって異なります。

●ハローワーク
就労に向けた相談・準備から、就職活動、就労後の相談まで幅広く受け付けています。

  • ハローワークインターネットサービスへリンクします(外部リンク)。

● 地域若者サポートステーション13)
働くことに悩みを抱えている15~49歳の方に対して、

キャリアコンサルタントなどによる専門的な相談ができます。就労に向けた支援を行っています。

学校卒業後・就労後

● 職場の産業医、産業保健師
職場で困っていることを話してみましょう。

勤め先に産業医や産業衛生保健師がいない場合は、地域産業保健センターで、医師または保健師の相談を受けることができます。14)

●ハローワーク
就労に向けた相談・準備から、就職活動、就労後の相談まで幅広く受け付けています。

  • ハローワークインターネットサービスへリンクします(外部リンク)。

● 地域若者サポートステーション13)
働くことに悩みを抱えている15~49歳の方に対して、

キャリアコンサルタントなどによる専門的な相談ができます。就労に向けた支援を行っています。

● 地域障害者職業センター15)
自分に合った働き方、仕事での不安なことや課題への対応、職場での配慮などのための相談ができます。

● 障害者就業・生活支援センター16)
就労に向けた相談や日常生活についての相談を受け付けています。

雇用、保健、福祉、教育などの関係機関と連携して、就業と生活における一体的な支援を行います。

神経発達症(発達障害)の相談について、5W1Hで整理してみましょう

子どもと大人の神経発達症(発達障害)の相談について、5W1Hで整理してみましょう

話を聞いてもらうと、こころが少し楽になることも

相談で話を聞いてもらうだけでも、こころが軽くなるものです。

相談では、まず困っていることを率直に話してみましょう。

そのうえで、どのような配慮をしてもらえるとその困りごとが解決するのか、相談に乗ってくれている方と一緒に考えていきます。

各施設に特徴があり、困りごとに応じて施設を選ぶこともできます。
受診が難しければ、まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

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【参考】

【参考】

1) 石橋裕子ほか編著. よくわかる!教職エクササイズ⑤ 特別支援教育(森田健宏ほか監修). 京都, ミネルヴァ書房, 2019, p.64.

2) 厚生労働省. 就労準備支援事業従事者養成研修 発達障害の理解. 2019年10月.

3) 厚生労働省. e-ヘルスネット[情報提供] 精神保健福祉センターと保健所.

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-08-003.html [2023年6月14日アクセス]

4) 厚生労働省 発達障害者雇用促進マニュアル作成委員会編著. 発達障害のある人の雇用管理マニュアル. 東京, 一般社団法人 雇用問題研究会, 2006, p.76.

http://www.koyoerc.or.jp/investigation_research/245.html [2023年6月14日アクセス]

5) 岩手県. いわてこども発達支援サポートブック 家族編. https://www.pref.iwate.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/377/family.pdf [2023年6月14日アクセス]

6) 特定非営利活動法人アスペ・エルデの会. 巡回支援専門員を活用した効果的な子育て支援のために. https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000307930.pdf [2023年6月14日アクセス]

7) 厚生労働省. 児童相談所運営指針の改正について 第3章 相談、調査、診断、判定、援助決定業務. https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv-soudanjo-kai-honbun3.html [2023年6月14日アクセス]

8) 厚生労働省. 「親子のための相談LINE」について. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29751.html [2023年6月14日アクセス]

9) 京都大学 学生総合支援機構 障害学生支援部門. 合理的配慮.
https://www.assdr.kyoto-u.ac.jp/drc/system/reasonable-accommodation/ [2023年6月14日アクセス]

10) 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所. 身近な相談機関. 

http://cpedd.nise.go.jp/qa/kosodate/sodan [2023年6月14日アクセス]

11) 独立行政法人日本学生支援機構. 合理的配慮ハンドブック~障害のある学生を支援する教職員のために~. はじめに, pp.9-10, 17, 38, 49, 80. https://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/shogai_infomation/handbook/__icsFiles/afieldfile/2021/04/01/h29_handbook_main.pdf [2023年6月14日アクセス]

12) 本田秀夫. あなたの隣の発達障害. 東京, 小学館, 2019, pp.184-186.

13) 厚生労働省. 地域若者サポートステーション. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/saposute.html [2023年6月14日アクセス]

14)  独立行政法人労働者健康安全機構. さんぽセンターはじめてガイド. 

https://www.johas.go.jp/Portals/0/sanpocenter/pdf/sanpocenter_leaflet.pdf [2023年6月14日アクセス]

15) 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構. 地域障害者職業センターのご案内.
https://www.jeed.go.jp/disability/person/om5ru800000003bn-att/q2k4vk000001rmrq.pdf [2023年6月14日アクセス]

16) 厚生労働省. 障害者就業・生活支援センターの概要.

https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001086176.pdf [2023年6月14日アクセス]


監修(五十音順)

医療法人南風会万葉クリニック 子どものこころセンター絆 センター長 飯田 順三 先生

国立大学法人信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室 教授 本田 秀夫 先生

社会医療法人啓仁会堺咲花病院 副院長 村上 佳津美 先生

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