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図表・イメージ:看護師

アイコン:不眠症の治療方法を知る不眠症の治療方法を知る

薬を使わない治療
(非薬物療法)

睡眠衛生指導や不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)があります1)

*CBT-I:cognitive behavioral therapy for insomnia

監修内村直尚先生(久留米大学 学長)

睡眠衛生指導

睡眠衛生指導として、代表的なものを以下に示します。1)

指導項目 指導内容
定期的な運動 なるべく定期的に運動しましょう。適度な有酸素運動をすれば寝つきやすくなり、睡眠が深くなるでしょう。
寝室環境 快適な就床環境のもとでは、夜中の目覚めは減るでしょう。音対策のためにじゅうたんを敷く、ドアをきっちり閉める、遮光カーテンを用いるなどの対策も手助けとなります。寝室を快適な温度に保ちましょう。暑すぎたり寒すぎたりすれば、睡眠の妨げとなります。
規則正しい食生活 規則正しい食生活をして、空腹のまま寝ないようにしましょう。空腹で寝ると睡眠は妨げられます。睡眠前に軽食(特に炭水化物)をとると睡眠の助けになることがあります。脂っこいものや胃もたれする食べ物を就寝前にとるのは避けましょう。
就寝前の水分 就寝前に水分をとりすぎないようにしましょう。夜中のトイレ回数が減ります。脳梗塞や狭心症など血液循環に問題のある方は主治医の指示に従ってください。
就寝前の
カフェイン
就寝の4時間前からはカフェインの入ったものはとらないようにしましょう。カフェインの入った飲料や食べ物(例:日本茶、コーヒー、紅茶、コーラ、チョコレートなど)をとると、寝つきにくくなったり、夜中に目が覚めやすくなったり、睡眠が浅くなったりします。
就寝前のお酒 眠るための飲酒は逆効果です。アルコールを飲むと一時的に寝つきが良くなりますが、徐々に効果は弱まり、夜中に目が覚めやすくなります。深い眠りも減ってしまいます。
就寝前の喫煙 夜は喫煙を避けましょう。ニコチンには精神刺激作用があります。
寝床での考え事 昼間の悩みを寝床に持っていかないようにしましょう。自分の問題に取り組んだり、翌日の行動について計画したりするのは、翌日にしましょう。心配した状態では、寝つくのが難しくなるし、寝ても浅い眠りになってしまいます。
文献1)より引用

また、本サイトの「睡眠の質を高めるセルフケア」の内容も睡眠衛生指導の一環です。
(上の表と重複する内容もあります)
参考にしてください。

不眠症に対する認知行動療法

認知行動療法とは2)

認知行動療法(CBT)は、極端な考えや行動を修正することによって、うつ病などの精神疾患を治療するために開発されました。
今では効果が実証された治療として、世界的に使われています。
また、最近では認知行動療法の考えに基づいた「認知行動変容アプローチ」が、ストレス対処法にも役に立つことがわかってきています。

不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)の実際

不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、不眠症に特化したCBTで、専門医療機関で実施されます。
これは、不眠症を長引かせてしまう生活習慣(行動パターンや睡眠に関する考え方)と身体反応(過覚醒:目覚めすぎてしまう傾向)に焦点を当て、それらをカウンセリングなどで修正して不眠を改善させる治療法です。1)
①睡眠薬の減量時、②睡眠薬の効果が不十分または無効の場合に選択肢として考えられますし、場合によっては最初の治療でも薬物療法とともに選ばれることがあります。1)
代表的なCBT-Iとして、刺激制御法があります。3)
この治療は「床に就いても、目がさえてしまう」と訴える患者さんなどに用いられます。

図表・イメージ:不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)の実際
文献 3)を参考に作成
図表・イメージ:医師
こうした悪循環を止めるために、以下のようなことを実践してみるとよいでしょう。
それにより「寝室でリラックスできる」という考え方(条件付け)が強まり、不眠の改善が期待できます。3)
  • 眠くなったときだけ、寝床に就きましょう
  • 寝床で本を読んだり、テレビを見たり、食べたりするのはやめましょう
  • 眠れなければ(例えば20分間)、寝室を出て別の部屋に行きましょう。本当に眠くなるまで別の部屋で過ごし、それから寝室に戻りましょう
  • その晩、どんなに眠れなくても、目覚まし時計をセットして、毎朝同じ時間に起きましょう
  • 昼寝はしないようにしましょう

睡眠表(睡眠日誌)と時間制限法3, 4)

CBT-Iによる治療法のひとつとして睡眠表(睡眠日誌)があります。
時間制限法は、この睡眠日誌で2週間の睡眠状態を“見える化”した後、2週間の平均睡眠時間から寝床に入っている時間を調整する方法のことです。

時間制限法は、少しでも長く眠るためにずっと寝床で過ごすことで、かえって浅い眠りや中途覚醒をきたしている不眠症において、寝床にいる時間を制限することで改善が期待できます。

※睡眠表(睡眠日誌)については「睡眠を“記録”する」を参照
ずっと寝床にいるのに眠れない → 睡眠表(睡眠日誌)で睡眠状態を確認 → 寝床に入る時間を調整 2週間の平均睡眠時間から寝床に入る時間・起きる時間を設定 改善/悪化度合い各設定時間を都度調整

CBT-Iは他にもあります。詳しくは睡眠専門の医療機関でお尋ねください。

  • 1)厚生労働科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループ作成: 「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」. 2013年10月改訂, pp.8-10, 29-30.
  • 2)厚生労働省: こころの耳 e-ラーニングで学ぶ 15分でわかる認知行動変容アプローチ. p.3.
    https://kokoro.mhlw.go.jp/e_cba/data/e-learning.pdf [2024年11月1日アクセス]
  • 3)睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会 内山真 編: 睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第3版. 東京, じほう, 2019, pp.145-151.
  • 4)三島和夫: やってはいけない眠り方. 東京, 青春出版社, 2017, pp.143-153.
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