肺の働き

肺は非常に目の細かいスポンジ状の組織で、吸い込まれた空気は、気管支の末端の直径数百ミクロンの肺胞という小さな袋まで到達します。
肺胞のまわりには「間質」と呼ばれる壁があります。間質は非常に薄く、その中には毛細血管が網の目のようにはりめぐらされていて、その毛細血管を流れる血液に酸素が取り込まれます。酸素を取り込んだ血液はいったん心臓へ戻り、全身に供給されます。
肺の構造
口や鼻から吸い込まれた空気は、気道を通って、肺にある「肺胞」と呼ばれる袋状の部屋に運ばれます。
肺胞は、弾力のある薄い壁でできており、その周りには細い血管(毛細血管といいます)が網の目のように張り巡らされています。
毛細血管を通る血液中の赤血球に酸素を与え、同時に、二酸化炭素を取り出す「ガス交換」をし、口や鼻から吐き出す運動が「呼吸」です。
肺胞は風船のようにやわらかく弾力があり、呼吸運動に伴って、上下に柔軟に伸縮します。
指導:学校法人 東北医科薬科大学 名誉教授 海老名 雅仁 先生

患者さんの肺の変化

肺胞に何らかの原因で“傷”ができます。繰り返し傷ができると、その構造が破壊され、修復のためにコラーゲンなどの線維物質が増加し、だんだん間質が厚くなり、やがて肺は線維化します。
肺が線維化すると、酸素が取り込みにくくなり、息苦しさを感じるようになります。
治療が遅れて病気が進行していくと、肺全体が固く膨らみにくくなり、ときには呼吸が維持できなくなる場合もあります。
正常肺構造、線維化が亢進した肺構造、健康な人の肺のCT、IPF患者さんの肺のCT
薄くやわらかな肺胞の壁に、さまざまな原因で傷ができます。通常であれば元通りに治ります。
ところが、繰り返し傷ができることで、傷を治すためコラーゲンなどの線維物質が増え、肺胞の壁がだんだん厚く、固くなってしまうことがあります。この、厚く固くなる現象を「線維化」といいます。
線維化した肺胞は次第に固くなり、弾力を失って膨らみにくくなります。そのため、酸素が肺胞の周りの血管に入りにくくなり、体の中に取り込まれる酸素の量が少なくなることで、息苦しさを感じるようになります。病気が進行すれば、固くなった肺胞がどんどん増えるため、息苦しさはますますひどくなっていきます。
また、肺が線維化すると、網の目のように張り巡らされていた毛細血管が押しつぶされて血管としての役割を果たせなくなってしまいます(消失します)。この状態になると、血液によって運ばれていた薬が、患部に届かなくなります。
指導:学校法人 東北医科薬科大学 名誉教授 海老名 雅仁 先生