WHO(世界保健機関)は、1986年にがんの痛み治療に対して「がんの痛みからの解放」1)を出版しました。この本で推奨された「WHO方式がん疼痛治療法」が多くの医療関係者に紹介され、今日に至るまでがんの痛み治療に広く活用されています。2018年には、更新された内容を伴ったWHOがん疼痛ガイドライン2)が発表されています。
- 1)World Health Organization, “Cancer Pain Relief,” Geneva: World Health Organization; 1986.
- 2)WHO Guidelines for the pharmacological and radiotherapeutic management of cancer pain in adults and adolescents、Geneva: World Health Organization; 2018.
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がんの痛み治療の最終⽬標は患者にとって許容可能な⽣活の質を維持できるレベルまで痛みを軽減することです。
そのため、できるだけ平常に近い⽇常⽣活を送れるように、主治医と下記のような目標を設定して、痛み治療に参加してみてはいかがでしょうか。-
睡眠が
とれるようになる -
座って食事が
とれるようになる -
移動が可能になる
特定非営利活動法人 日本緩和医療学会ガイドライン統括委員会編:がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版.p36 -
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1. 可能な限り、飲み薬を使う
飲み薬は、他の人の助けを借りずに、患者さん一人で実施できるため、生活を制限することがありません。
飲み薬を服用することができなくなった場合には、貼付剤あるいは坐剤や注射剤を使います。2. 時刻を決めて規則正しく使う
がんの痛みは持続することが多いため、時間を決めて一定の間隔で服用し、薬の効果が弱くなる時間ができないようにします。
鎮痛薬を服用する間隔は薬により異なることがありますので、わからないときは医師や薬剤師に相談しましょう。3. 患者さんにあった量の薬を服用する
痛みは患者さんによって感じ方が違うため、それぞれの患者さんの痛みに合わせて必要な鎮痛薬の量を決める必要があります。適切な薬の量とは、患者さん自身が十分痛みがやわらいだことを実感でき、眠気などの副作用が気にならずに日常生活を過ごせる量です。
4. 1から3を行ったうえで、細かな配慮をする
鎮痛薬を適切に継続していくために、副作用への対処法や薬の服用法、さらには痛み以外の心配事などについて、医師や看護師、薬剤師と相談しながら調整していく必要があります。