腰痛はみんなが困っている症状
男女で訴えが多い症状のうち、腰痛は女性、男性でそれぞれ何位かご存知ですか?1)
性別にみた有訴者率の上位3症状
女性 | 順位 | 男性 |
---|---|---|
腰痛 | 1位 | 腰痛 |
肩こり | 2位 | 肩こり |
手足の関節が痛む | 3位 | 頻尿(尿の出る回数が多い) |
腰痛は、多くの人に共通の悩みです。あなただけではありません。
日常生活や仕事にも影響を及ぼす
腰痛があると生活するうえでも活力が失われたりしていませんか?「腰痛あり」の集団は「腰痛なし」の集団より、体の痛みがあるうえに、活力や一般的健康感なども下がっていたという日本整形外科学会の調査結果があります2)。
腰痛になると仕事にも悪影響を及ぼします。日本の労働者1万人を対象に行われた調査3)によると、腰痛は仕事に支障をきたす主な病気・症状の第2位でした。また、出勤するものの病気や症状があって本来のパフォーマンスが出せない状態だと、国民1人当たりの労働生産性損失コストが3番目に高いことが報告されています。
仕事に支障をきたす、ならびに労働生産性損失コストが高い上位3つの病気・症状
仕事に支障をきたす 主な病気・症状(人数が多い順) |
順位 | 労働生産性損失コストが 高い病気・症状 |
---|---|---|
首の痛み または 肩こり | 1位 | 精神疾患 |
腰痛 | 2位 | 首の痛み または 肩こり |
精神疾患 | 3位 | 腰痛 |
- 対象:20~69歳の日本人労働者(n=10,000)
- 方法:2019年9月から10月にかけて、健康状態や仕事の生産性に関するインターネット調査を実施した。
腰痛は日常生活や仕事などの社会活動に影響を及ぼす可能性があります。
いろいろな腰痛
腰痛と聞くとそれだけで病気と思われがちですが、実は「症状」です4)。一口に腰痛と言っても、原因はひとつではありません。さまざまな病気や外傷(ケガ)によって、椎間板、椎間関節をはじめ、筋肉や筋膜、靭帯、血管などが傷害されて腰痛になるとされています。
腰痛の原因別分類4)
原因がある体の部位 | 原因になる病気など |
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脊椎とその周辺 | 脊椎腫瘍、腰椎椎間板ヘルニア など |
神経 | 脊髄腫瘍、馬尾にできた腫瘍 など |
内臓 | 尿路結石、子宮内膜症 など |
血管 | 動脈瘤 など |
心因性 | うつ病、ヒステリー など |
習田先生コメント
腰痛を診る専門医は、主に整形外科医です。多くの整形外科医は診察や検査をもとに、できる限り腰痛の原因をはっきりさせようとします。
ただし、一部の腰痛では、原因になる病気やケガが明らかになりません(下記参照)。
原因がはっきりしない腰痛4)
検査などをしても、腰痛の原因となる病気や外傷(ケガ)がわからない(診断ができない)腰痛です。代表的なものを4つ挙げます。
- 筋・筋膜性腰痛
- 腰周辺の筋肉、筋膜に対して過剰な負荷がかかり、炎症などが生じると起こる腰痛です。
- 心因性腰痛
- 近年、腰痛の原因として注目されているのが心理社会的側面、つまり心身のストレスです。腰痛の慢性化には心理的なストレスが関与するとされています。
- 椎間関節性腰痛
- 椎間関節に炎症があったり、機能が落ちたりしたときに起こる腰痛です。
- 椎間板性腰痛〔椎間板(髄核・線維輪)が前方/後方にずれることにより起きる腰痛〕5,6)
- 腰椎には、椎体と椎間板、神経があります。椎間板には髄核と線維輪があり、椎体と椎体の間で負荷を軽減するクッションのような役割を担います。
椎間板(髄核や線維輪)が体の前後や横にずれると、神経を圧迫し、その場所に痛みが生じてしまいます。ひどくなると、いわゆる“ぎっくり腰”や腰椎椎間板ヘルニアになることもあります。
習田先生コメント
原因がはっきりしない腰痛の場合、代表的な筋肉・筋膜、心因、椎間関節、椎間板に加えて、脊椎以外の関節(膝・股関節)の悪化なども相まって、要因が複雑に関わっていることが多いのです。
このサイトで紹介するエクササイズは、複雑な要因の中に椎間板の問題がある腰痛に対して効果が期待できるとされています。
腰痛の有症期間4)
腰痛を、症状がある期間で分けることがあります。いわゆる“ぎっくり腰“や腰椎椎間板ヘルニアは、急性腰痛です。これらが再発して繰り返すと、3ヵ月以上痛みが続く慢性腰痛に移行することもあります。
有症期間での腰痛の定義4)
習田先生コメント
このサイトでは、慢性腰痛(長引く腰痛)に対する運動療法を紹介
します!
女性特有の腰痛
女性では、男性とは異なる原因で腰痛が出てきてしまうことがあります。
習田先生コメント
腰痛は老若男女を問わずかかることのある症状で、とてもつらい思いをする人も多くいらっしゃいます。また、女性はいわゆる“腰痛持ち”になる要素が少なくありません。
1)厚生労働省. 2022年 国民生活基礎調査の概況. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html(2023年10月24日アクセス) 2)福原俊一ほか. 腰痛に関する全国調査 報告書 2003年, 2003. https://www.joa.or.jp/media/comment/pdf/lumbago_report_030731.pdf (2023年10月24日アクセス) 3) Yoshimoto T, et al. J Occup Environ Med. 2020, 62(10), 883-888. 4)日本整形外科学会, 日本腰痛学会監修. 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会, 腰痛診療ガイドライン策定委員会. 腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版. 2019, 東京, 南江堂. pp.7-8,12. 5)ROBIN McKENZIE著. 仲井光二訳. マッケンジー エクササイズ 腰椎-構造的診断と治療法-. 1997, 東京, 科学新聞社. pp.15-18. 6)厚生労働省 佐賀労働局健康安全課・佐賀産業保健総合支援センター. 今、腰痛で困っていない方こそ注目! 今日の腰痛予防対策マニュアル(松平浩監修). https://jsite.mhlw.go.jp/saga-roudoukyoku/content/contents/000871949.pdf(2023年10月24日アクセス) 7)永見倫子. 日保健科会誌. 2019, 22(1), 16-21. 8)伊藤忠ほか. 愛知理療会誌. 2012, 24(1), 36-38. 9)佐藤勝彦. 腰痛 第2版(菊地臣一編著). 2014, 東京, 医学書院, pp.202-204.